他院なら取るであろう歯髄を残した症例
歯髄を取る処置「抜髄」
歯の内部には歯髄を呼ばれるゼリー状の組織が入っていますが、大きな虫歯などが原因で、歯髄は感染を起こします。その場合には、歯髄を取り除き、歯の健康を守ります。この処置を抜髄と呼びます。この処置は虫歯が大きかったり、感染が原因で痛みがある場合は必要な処置なのですが、歯の寿命という観点からは、幾つかのデメリットがあります。
抜髄のデメリット
処置が難しい
多くの歯科医院で毎日のように行われている根管治療ですが、実は、日本での根管治療の成功率は、非常に低く、40~50%と言われています。それだけ難しい治療なのです。
歯の寿命が短くなる
抜髄をした歯は、歯の量がなくなるため、一般的に、歯髄の残っている歯と比較し、寿命が短いのです。
このような観点から、虫歯が大きくても、歯髄は可能な限る保存したほうが良いのです。
歯髄を保存した症例
今日提示する症例は、虫歯が大きく、通常であれば、歯髄を取り除いてもおかしくない歯の、その歯髄を保存した症例です。
レントゲン写真上での、真ん中の白いつめ物の装着されている歯です。つめ物の下に大きな虫歯があります。この虫歯を取り除くと、内部にある歯髄が露出してしまいました。通常であれば抜髄ですが、今回はMTAセメントの用いて、歯髄の保存にチャレンジしました。
1週間後、症状も全くないため、MTAセメントの硬化を確認し、コンポジットレジンで土台を作ります。
青いレジンの仮ふたを取り除いています。
仮ぶたを外したところです。内部にある灰色の材料がMTAセメントです。このセメントが固まっているのを確認しました。
この部分にコンポジットレジンを接着させるため、表面処理を行いました。
その後、レジンを流し込み、硬化させます。
これらの処置はマイクロスコープを用いて行いました。
今後、1ヶ月の経過観察後、問題なければ、歯髄を保存できると判断し、クラウンを装着する予定です。
まとめ
このようなケースでは、多くの場合神経を取る処置「抜髄」を行うでしょう。しかし、可能であれば、歯髄は保存するべきです。なぜなら、歯髄を保存することは、その歯の延命治療につながるからです。