歯髄保存療法|歯内療法(根管治療)ウィキペディア

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歯髄保存療法

神経を守る歯髄保存療法について

歯の神経や血管が収まる歯髄(しずい)まで、またその付近に虫歯が進行した場合、その後の感染や痛みを防ぐため、多くの場合、神経を取り除く「抜髄(ばつずい)」が行われてきました。しかし、神経を抜く事は歯の寿命を縮めるリスクであり、また根管治療自体が複雑であるため、この神経を残す「歯髄保存療法」と呼ばれる治療法も昔から存在していましたが、実際に残そうとしてもうまくいかないことが多く、メジャーな治療法ではありませんでした。

しかし、近年のテクノロジーの進歩により、この「歯髄保存療法」の精度が格段に向上し、科学的な背景からも、その信頼性が高まっています。つまり、今まで抜かなくてはならなかった神経を、保存できる確率が高くなったのです。

歯髄保存療法は、虫歯の進行状態から「間接覆髄法」「直接覆髄法」「部分断髄法」「全部断髄法」と言う4つの方法に分類されます。必ず成功するわけではありませんが、やみくもに神経を抜いていた従来の治療に比べると、神経を保存でき、歯の寿命を延ばせる可能性が高まりました。

歯髄(神経)を取り除く事で生じるデメリット

脆くなる

根管治療を行うと歯の残っている部分が少なくなるため、咬合力に耐えられず、根にヒビが入る歯根破折の可能性が高まり、将来的な抜歯リスクを高めます。

感覚がなくなる

神経を除去すると本来あった感覚を失ってしまいます。歯が病気になったり、異変が生じた際にも気づかず症状は悪化の一途を辿る事となるので、注意が必要です。また、咬む感覚も鈍くなるため、神経のある歯と比べると、強い力がかかりやすく、壊れてしまうリスクにもなります。

歯根の成長を止めてしまう

歯根が未完成のうちに神経を失うと、その歯の歯根の成長が止まってしまいます。歯根の壁が薄く、咬む力に耐えたれずに、将来的に抜歯になるリスクが高まります。

歯髄保存療法とは

歯髄保存療法保存可能である歯髄が虫歯や外傷などにより口腔内に露出してしまった場合に、その歯髄を確実に保存し、健康を保ち、その歯の寿命をより長くする治療法です。

上記の歯髄を取り除くデメリットを解消するメリットがあります。

歯髄保存療法のメリット

歯根部分の歯質の歯質が脆くならない

根管治療をしなくて済むので、不必要な歯質を削りません。また、根管治療では、刺激の強い薬剤で根管内を処置するため、それらの作用で歯質が弱まりますが、これらの作用の心配をする必要がありません。結果として、歯質が弱くならないので、歯が壊れてしまうリスクを軽減できます。

感覚の保存

温度に対しての感覚を失うことがありません。また、歯髄を取ってしまうと、咬む力に鈍感になってしまうと言われています。歯髄を保存することにより、咬む力に対しての敏感さを失わないので、歯に不必要な強い力がかからずに済みます。

正常な歯根の成長

歯髄を残すことで、幼若永久歯(成長途上の歯)の正常な歯根の成長が可能になります。その結果、歯の寿命が長くなることが予測できます。

歯髄保存療法の分類

間接覆髄法(Indirect Pulp Capping)

歯髄に近接した深いカリエス(神経がギリギリ出ないくらいの大きな虫歯)がある歯の歯髄を、健康な状態で保存するために行う処置。適応症は、歯髄の状態が正常、もしくは可逆性歯髄炎(歯髄を取り除かなくても回復の見込みがある状態)と診断された症例。

直接覆髄法(Direct Pulp Capping)

虫歯除去中の露髄(虫歯を取っている最中に神経が出てしまうこと)、外傷による露髄(怪我で歯が折れるなどして、歯の内部の神経が飛び出てしまうこと)、形成中の露髄(歯の形を整えている最中に神経が飛び出してしまうこと)などに対し、歯髄の健康を保つために行う処置。成功のカギは、歯髄の炎症程度によるため、歯髄にダメージが及んでいないものが適応症となります。

部分断髄法(Partial Pulptomy)

カリエス(虫歯)や外傷により傷んでしまった歯髄を部分的に取り除き、その奥に存在する健康な歯髄を保存する処置。歯髄保存療法の中で最も多い処置となります。

全部断髄法(Full Pulptomy)

歯冠部(歯肉より上の歯質部分)の歯髄を根管口部分まですべて取り除き、健康な状態の歯根部歯髄を保存する方法。

歯髄保存療法を成功させるために大切なこと

術前の診断

診断治療する歯の神経はどのような状態なのか?残せる状態なのか?この治療が有効なのか?ということを術前に診断することが大切です。

確定診断はできませんが(これが歯髄保存療法の難しい点です)、痛みの既往や歯髄電気診断、温度診などにより、歯髄の状況をしっかりと見極める必要があります。

細菌が可能な限り少ない環境での治療

ラバーダム歯髄が傷んでしまう原因は細菌です。

そのため、虫歯を取り切る、ラバーダム(治療する歯を口腔内から隔離するゴム製のシート)をする、滅菌した器具で治療するなど、細菌感染に配慮した治療が不可欠です。

ラバーダムについて>>

歯髄の状況の確認「止血できるかどうか」

止血歯髄がどのような状態なのかは、治療中に確定診断することは困難です。このような背景がある中で、それでも私が信頼している方法は「止血できるかどうか」です。

健康な歯髄を露出させた状態で、その上に滅菌した綿球に滅菌精製水を染み込ませ、軽く圧迫し10分程度置きます。この時点で「止血できているか」が大切なポイントです。

※この方法に明確な科学的根拠はありませんが、国際外傷歯学会会長のNestor Cohenca先生が推奨しています。

MTAセメントなどのバイオセラミック系の材料の使用

MTAセメント歯髄保存療法を成功させるには、歯髄を健康な状態で保つことができ、なおかつ細菌が入らないよう封鎖能力の優れた材料を使う必要があります。

この特徴を持っているのがMTAセメントなどのバイオセラミック系の材料です。このような材料を使用することにより、従来の治療法よりも格段に成功率を高めることが可能となります。

MTAセメントについて>>

精度の高い修復物(詰め物・被せ物)

修復物治療後に、細菌が内部に入らないよう、精度の高い被せ物(クラウン)、詰め物(インレー)をする必要があります。

修復物の精度を高めるためには、耐久性の高い素材選びをはじめ・精巧な型取り・技術と知識を兼ね備えた歯科技工士との連携が重要となります。

クラウンについて>>

歯髄保存療法を実施する際の注意点・デメリットについて

歯髄の確定診断ができない

この歯髄は残すべきなのか?という明確な確定診断ができません。歯内療法の分野でもっとも重要なことの一つは「診断」です。しかし、この診断が術前、そして術中にも「不明確」であるため、後々問題が起きてしまうリスクがあります。

歯質が少なくなっているため被せる必要性がある場合が多い

歯髄保存療法が必要な歯は、歯髄が露出してしまうほど大きな虫歯があります。そのため、多くの場合、被せる必要があると考えています。被せ物での処置では切削範囲が大きくなるため、ダメージを受けている歯髄に、歯を削ることによるさらなるダメージを与えることになります。そのため、せっかく残した歯髄に悪影響が出て、後々問題が起きる可能性があります。

「被せずに詰めればいいのでは?」と思う方もいるかと思います。確かに、上手に詰める先生もいらっしゃるかと思いますが、残っている歯の部分が少ないため、割れやすくなっていると考えられます。この部分には、歯科医師それぞれで考え方が異なるため、一概に正解はありませんが、それぞれの方法にリスクが伴います。私は、被せるタイプの歯科医師です。

長期的な安定の疑問

近年、テクノロジーの進歩により、残せる神経が増えてきているのは事実です。しかし、神経が残ったまま長期的に安定していることを確認した科学的な根拠が少ないことが、デメリットの一つでもあります。歯髄が保存できた状態で長期的に安定できるのか、疑問が残ります。

私の友人の症例ですが、歯髄保存療法をしたにもかかわらず、治療して6年後に歯根が溶けてしまい、歯が壊れてしまっているものもあります。このように、本当に歯の健康を保つのに歯髄保存療法が有用なのか、疑問が残る部分もあるのです。

歯髄保存療法のまとめ

虫歯、外傷などで、歯髄が露出してしまうほど大きなダメージがある歯は、歯髄にもトラブルが生じているかもしれないため、保存せずに取り除いた方がよかった可能性があることは否定できません。

現に、歯髄保存療法を良しとせず、歯髄を取り除く「抜髄」を選択する歯内療法専門医もいます。しかし、テクノロジーの進歩により、歯髄を残すことのできる可能性は以前と比較し、格段に向上している可能性があることも、また事実です。

このような中であなたに伝えたいこと。それは、

歯髄保存療法について理解すること

上記に説明した通り、歯髄保存療法は素晴らしい治療法ですが、デメリットもあります。これらのことを、十分に理解して治療を受けてください。

治療する先生とよく話し合うこと

もちろん、歯髄を保存できた方が良いです。しかし、場合によっては、歯髄を取り除く「抜髄」の方が良い選択の場合もあります。担当する先生とよく話し合い、より良い選択をできるよう心がけてください。

神経の保存にこだわった歯髄保存療法をご希望の方へ

歯髄保存療法

MOMO DENTAL CLINICでは、歯の寿命を左右する歯の神経の保存にこだわり、歯髄保存療法に力を入れています。歯の神経を残せることで将来的な抜歯リスクを軽減し、健康な歯を維持することができます。岡山で歯髄の保存にこだわった歯内療法を実施している歯科医院をお探しの際は、ぜひお気軽にご相談下さい。

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