再根管治療
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神経を抜いた歯が再発した場合には「再根管治療」を実施
以前に根管治療(歯内療法)を受けて症状を改善した歯でも、処置精度が低い事が原因で再び根管治療が必要になる場合があります。根管内部に虫歯感染物質の取り残しがあったり、歯の根っこにひびがはいったりする事で細菌が繁殖し、歯根の先端に膿が溜まる症状を引き起こす事もあるため、少しでも違和感を感じたらできるだけ早めに診断を受ける事をおすすめします。
ほぼ半分が再治療と言う現実
上記のグラフを見ていただくと分かると思いますが、数ある歯内療法の中でも神経を抜いた歯(既に根管治療をしている歯)に対して行う「再根管治療」の割合が50%以上と言うデータが存在します。初回の根管治療の処置精度が低いと細菌の感染、繁殖が再び起こり再治療が必要となるのです。また、神経を抜く事によって、歯が脆くなりますので歯根の破折などが起きやすくなる事も再治療の確率をあげる要因となります。
再発を高めてしまう要因について
(引用元:HA Ray, 1995, Inter Endod J)
上の表は、初回根管治療の成功率をデータ化したものです。根管治療の精度とかぶせ物の精度の高低の組み合わせによって、治療の成功率を算出しています。精度の高いもの同士であれば90%以上の成功率ですが、どちらか一方あるいは、どちらも精度の低い状態であるとおよそ30%~90%の確率で再治療が必要と言う事になります。
根管治療の精度とは、感染物の除去・根管の形成・殺菌・充填など一つひとつの工程をどれだけ的確に行ったかと言う事です。肉眼よりもマイクロスコープで患部を診断した方が、精密な処置ができますし、一般歯科医師よりも根管治療を専門としている歯科医師の方が知識や技術の面から、精度の高い処置が行える可能性は高いです。
使用する器具や薬剤、それらを扱う技能によって治療の精度は変動します。かぶせ物の精度と言うのは、適合性の高さ(素材や工程によって変動)です。土台となる歯とどれだけピッタリな人工歯を作製する事ができるかにかかっています。
マイクロスコープで見るかぶせ物の適合性
適合性が低い→再治療リスクが高い
以前、治療でかぶせ物をした歯を拡大してみると、土台の歯との間に段差が確認できます。器具で確かめると良く分かります。そして、左側の隙間に虫歯を発見しました。適合性が悪いかぶせ物だと、根管治療をしっかり行っても、隙間から細菌が侵入して内部に感染を広げてしまいます。やがて根管内部でも細菌が繁殖して、炎症(根尖性歯周炎)や嚢胞などを引き起こすため、再治療が必要となってしまいます。
適合性が高い→再治療リスクが低い
こちらのかぶせ物も、拡大視野で段差の確認を行いましたが、器具を使用しても全く段差なく、高い適合性を維持出来ています。土台との歯に隙間がないので、歯の内部に虫歯菌が侵入できません。そのため、根管治療の再発率を最小限に抑え、長期的な健康維持を実現しています。かぶせ物の適合性は、根管治療の成功にとても重要だと言えます。
再根管治療が必要となる根尖性歯周炎とは
再根管治療が必要となるケースの一つに、歯の根の尖端部分に病変ができる「根尖性歯周炎」と言う症状があります。重度の虫歯を治療せずに放置する事でも起こりうる症状ですが、すでに根管治療を行い、神経を抜いている歯に多くみられる症状です。
根管内に感染物質の取り残しなどがあったり、根管の空洞がしっかり埋められてないなど、治療精度が低い事や根尖部の損傷などが原因で起こります。歯茎から膿が出たり、咀嚼の際に痛みを伴うため、早急な対応が必要となります。
再根管治療の成功率は初回よりも低くなる?
初回の根管治療も成功率が低いと言われており、実に半分以上が再発すると言うデータが存在します。では、再発した歯に対して行う再根管治療の成功率はどうでしょうか?当然ながら、初回の根管治療よりもさらに、成功率は下がります。
特に根の先に膿がたまっている症例に対して実施する再根管治療では、ラバーダムでの細菌管理の徹底、水酸化カルシウムでの細菌の繁殖防止、次亜塩素酸ナトリウムでの滅菌などをしっかり行っても、およそ4割は失敗すると言われています。さらに、驚くべきことは初回の治療精度が高い症例の方が、再根管治療においては失敗する確率が高いとされています。
再根管治療の失敗を高める要因
最初の処置で根管がより複雑に
一度治療が行われている歯は、すでに手を加えられているために、本来の根管とは違う場所に道が出来ていたり、器具によって根尖部に穴が開いていたりと根管の形状が、より複雑になっています。その一つひとつを完全な状態で処置する事は、例え設備や技術が伴った歯科医院でも難しく、失敗する確率が上がってしまいます。
処置を繰り返して歯が薄くなる
繰り返し治療を行われた歯は、歯質が削られている事から歯が薄くなっています。再根管治療になった場合には、さらに削る事となるため細菌感染を改善出来たとしても、噛む力によって、歯が割れたり、破損するリスクが高くなり、歯根の破折をした場合には再び治療が必要となってしまいます。
根管治療の実施回数にも限度がある
「再発しても、また治療すれば大丈夫」と思うかもしれませんが、残念ながら根管治療は何度も行えるわけではありません。上記に記した通り、回数を重ねるごとに確実に残存歯質は減っていくからです。時間を費やして治療を行っても最終的に歯を失うことになっては何の意味もありません。根管治療を受ける際には、できるだけ精度の高い処置を受け再発防止に努めましょう。
再根管治療の際に気をつけるポイント
充填材の除去
ガッタパーチャポイントやセメントなど、それまで根管内に充填されていた材料を取り除く必要があります。理由は、根の内部の汚れ取りの邪魔になったり、根の細部の観察の妨げになるからです。除去には、超音波チップなどを用いて熱を発生させ溶かす方法、ニッケルチタンファイルなどを用いて材料を砕く方法、耳かきのような器具で掻き出す方法、クロロフォルムやGPソルベントという化学製品で溶かす方法、などが挙げられます。
補綴物の除去
根管内にアプローチするために、それまでに装着されていたクラウン、コア、ポストを取り除く必要があります。この際に注意しなければならないポイントは、「歯を必要以上に削らない」ということです。歯冠部、歯根部の残っている部分が少なければ少ないほど、薄ければ薄いほど、その歯は咬む力に耐えられなくなり、壊れてしまいます。この工程の精度は治療している歯が長持ちするかどうか、に大きく影響します。
破折したファイルの除去
根の内部を大きくする器具「ファイル・リーマー」が根の内部で折れてしまうことがあります。折れてしまった器具自体には問題はないのですが、この器具が障害物になり、根管内の汚れが取れない場合があります。このような場合には、この折れてしまった器具を取り除く必要があります。
パフォーレーション(穿孔)
すでに、治療をしている歯は根管がさらに複雑になっている事に加え、すでに歯を削っている分、場所によっては歯質が弱くなっています。無理な器具の操作によっては、根尖部を貫通して穴があいてしまうパーフォレーションを起こすリスクが非常に高くなります。パーフォレーションに気づかず治療を終えてしまうと、その部分から細菌感染が起こり、痛みや腫れの原因となったり、長い時間放置すると骨の吸収(骨が溶ける)なども起こります。パーフォレーションは、通常でも低い治療成功率をさらに下げてしまう事になるため、丁寧な処置で根管を傷つけないようにする事が重要です。
再発リスクを抑えた再根管治療をご希望の方へ
すでに神経を抜いた歯に対して行う再根管治療では、さらに成功率が下がるため慎重な処置が要求されます。当院では根管治療を成功させるため、有効な器具や薬の使用はもちろんですが、一人ひとりにしっかりとお時間を取り、丁寧な処置を行うことで再根管治療の成功率向上に努めております。岡山で神経を抜いた歯の再治療が必要な際にはぜひ、MOMO DENTAL CLINICへご来院ください。誠意をもってできる限りの処置をさせていただきます。