根管治療の流れ
このページの目次
- 1 根管治療(抜髄)の流れを解説
- 2 精密根管治療による抜髄処置について詳しくご説明します
- 2.1 歯の内部にある神経に虫歯菌が感染した歯
- 2.2 CTを用いて精密検査
- 2.3 ラバーダム防湿
- 2.4 マイクロスコープ
- 2.5 残存歯質が少ない歯にはレジンでの隔壁処置を実施
- 2.6 感染物質の除去と根管拡大
- 2.7 ニッケルチタンファイル
- 2.8 ステンレスファイル(手用ファイル)
- 2.9 根管形成時の処置精度を高める「根管長測定器」
- 2.10 根管内部の感染物質の殺菌で無菌化を図る
- 2.11 EDTA
- 2.12 次亜塩素酸ナトリウム
- 2.13 水酸化カルシウムによる根管貼薬と仮封で細菌増殖・侵入を抑止
- 2.14 根管充填で空洞になった根管を隅々まで埋めます
- 2.15 ガッタパーチャポイント
- 2.16 MTAセメント
- 2.17 被せ物を安定させるためのコア&ポストで支台築造
- 2.18 ファイバーポスト
- 2.19 CRコア
- 2.20 適合性の高い精密な被せ物を装着
- 2.21 歯肉圧排
- 2.22 精密な印象採得
- 2.23 徹底した咬合調整
- 3 工程一つひとつの精度にこだわった根管治療をご希望の方へ
根管治療(抜髄)の流れを解説
① 神経が虫歯菌に感染した歯
虫歯が重度にまで進行して、歯の内部にある歯髄(神経・血管)にまで達した場合に処置を実施します。少しでも多く健康な歯質を残すため、丁寧に切削を進めて行きます。
② ファイルで根管形成・清掃
リーマーやファイルと呼ばれる専用器具を使用して、根管内部の虫歯菌に感染した神経や血管などの除去と根管の拡大を行います。根管内部は複雑な形状をしているため、取り残しや内部を損傷させないように注意しながら、根管の形成を行います。
③ 根管を殺菌洗浄
感染物質やファイルなどで削った感染歯質が根管内部に残らないように、薬剤を使用して洗浄を行います。細菌が少しでも残っていると再発のリスクを高めてしまうため、慎重な処置が必要です。
④ 根管を充填
洗浄によって細菌の徹底除去を行った後、根管内部の空洞を埋める「根管充填」を行います。根管内部に細菌の繁殖場所を残さないように、隅々まで歯科用のセメントを流して固めて行きます。
⑤ 根管の密封・支台築造
流し込んだセメントが硬化して根管の封鎖を確認後、最終的に装着する被せ物が安定するように歯を削った部分を埋めたり、歯の欠損が大きい場合には支台(コア)を造成します。
⑥ 仕上げに被せ物を装着
歯の内部に細菌が侵入しないように、土台となる歯との適合性にこだわって被せ物の作製を行います。被せ物が完成後、装着して咬み合わせの調整を行い、治療終了です。
精密根管治療による抜髄処置について詳しくご説明します
歯の内部にある神経に虫歯菌が感染した歯
歯の内部には、神経や血管が収まる歯髄(しずい)という組織が存在します。根管治療が必要になる歯は、虫歯が進行してこの歯髄にまで感染が広がった場合です。
事前の精密検査や、治療患部の隔離、拡大視野での処置を徹底し、精度の高い根管治療を行います。
CTを用いて精密検査
根管内部の形状や病変の確認のために歯科用CTを用いて精密検査を行います。見落としがちな側枝や病巣を事前に把握する事によって、再発率を抑えた精密な処置が可能となります。
ラバーダム防湿
唾液が0.01mlでも根管内に侵入してしまうだけで、再発をすると言われるほど、根管内部の無菌化はとても重要なため、治療を行う歯にラバーダムと言うゴム性のシートを使用して、治療中の根管内部に唾液が侵入しないように口腔内環境から隔離します。
マイクロスコープ
治療において患部の確認を自身の目で行える事は、なによりも重要です。マイクロスコープは、肉眼の約30倍にまで視野の拡大が行えますので、狭くて暗い根管内部の状態を常に確認しながら的確な処置が行えます。さらに、細部の根管や、歯面のひびなどの見落とし防止により、再発リスクを抑えた精密な治療が可能となります。
残存歯質が少ない歯にはレジンでの隔壁処置を実施
ラバーダムをするには、ラバーダムクランプと呼ばれる金具を歯にかける必要があるのですが、残存歯質が少ないとこの金具がかかりません。そのため、歯の部分のなくなっている部分にコンポジットレジンやセメントなどで人工の壁を作ります。これを「隔壁」と呼びます。この隔壁を作ることで、治療中、治療期間中における細菌の歯の内部への侵入を防ぐことができます。当院では、この部分をコンポジットレジンで作り、根管治療後の土台(コア)の一部として用います。そのため、この隔壁の精度が治療した歯を長持ちさせるために、とても大切になります。
感染物質の除去と根管拡大
ファイル(またはリーマー)と言う針のような専用器具を使用して、根管内部に蔓延る感染物質の除去と、洗浄時に薬剤を隅々まで行き渡らすための根管の拡大を行います。
ファイルは、大きく分けて2つ「ニッケルチタンファイル」と「ステンレスファイル」が存在します。それぞれ特徴があり、適材適所で使い分ける事によって、効率的に根管の清掃・根管の拡大を行う事ができます。
ニッケルチタンファイル
ニッケルチタンファイルは、弾力性があるため大きく湾曲した根管でも適切な根管形成を可能にします。特に根尖部分の形状は細くて複雑ですので、硬いステンレスファイルでは損傷リスクが高くなります。根尖部の損傷は、さまざまな問題を引き起こす原因となるため、ニッケルチタンファイルは必須と言えます。高価な事や金属疲労の判断が難しいため、突然破損する事がデメリットとしてあります。
ステンレスファイル(手用ファイル)
根管洗浄の際、隅々まで薬剤が行き渡るように、根の尖端までしっかり道を作る事が根管形成では重要です。そこで、歯根の尖端まで穴を貫通させるために使用するのがステンレス性のファイルです。ステンレスファイルはニッケルチタンファイルに比べ、細い形状の物が多く、硬い性質のため、しっかりと歯根の尖端まで穴を貫通させる事が可能です。
イニシャルネゴシエーション
髄室開拡(歯質を削り根管口を明示)、ストレートラインアクセス(器具が直線的に入るよう整える)により、治療している歯の根管の入り口を拡大した後、根管内にアプローチするのですが、その根管に初めてファイルを挿入する行為を「イニシャルネゴシエーション」と呼びます。この行為により、根管が細いのかどうか、曲がっているのかどうなのか、などの根管の特徴をある程度はかります。
グライドパス
根管拡大・根管形成をよりスムーズに行うために、専用の器具を使用して通り道を予め作っておく必要があります。この通り道を「グライドパス」と呼び、この工程を行うことでファイルでの処置や根管充填の効率を高めることができます。
根管拡大・根管形成
根管を大きくする工程を指します。この工程には幾つかの目的があります。
- 1. 細菌の除去
根管治療は根管内部の細菌、つまり根の内部の汚れ取りがメインなのですが、この目的を達成するために、根管の拡大・形成を行います。 - 2. 洗浄液がうまく浸透するため
根管内をきれいにするために、殺菌作用のある洗浄液や根管内の削りカスを溶かす洗浄液を使用するのですが、これらの洗浄液が根の先の方まで浸透しやすいよう、根の内部を拡大します。 - 3. 根管充填のため
根管治療は最終的に根管内の空洞を埋める「根管充填」を行うのですが、この工程がしやすいように、根管の拡大と形成を行う必要があります。
根管形成時の処置精度を高める「根管長測定器」
感染物質の除去や根管形成を安全に行うためには、正確な作業長(根管の長さ)を知る事がとても重要です。根管長測定器は、頬粘膜と歯根膜の電圧の違いを基に、正確な根管の長さを計測できる機器です。
根管の長さを知ることによって、根管の尖端まで処置が行われているかを正確に知る事ができるため、治療精度を向上することができます。また、器具による損傷リスクも軽減する事ができるため、精密根管治療には重宝する機器と言えます。
根管内部の感染物質の殺菌で無菌化を図る
根管内は、複雑な形状や歯質の凹凸が存在するため、ファイルによる根管形成だけでは完全な細菌の除去は困難です。
そこで、薬剤を使用した根管洗浄を行い、細部に残る細菌や削りカスなどを取り除いて行きます。
EDTA
EDTAとは弱アルカリ性(pH9~pH10)の水溶液です。根管拡大時に出た細菌を含む削りカスが、象牙質にある細い管に詰まって形成されるスメア層の除去を目的としています。次亜塩素ナトリウムと併用することで、精度の高い殺菌が行えます。
次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウムは、数ある根管内を洗浄する液体の中でも、もっとも有用とされ、多くの歯科医師に使用されているものです。理由は、根管内の細菌を殺す役割と、歯髄の破片などのタンパク質を溶かす役割があるからです。次亜塩素酸ナトリウムはこの二つの効力を持つ数少ない根管内洗浄液なのです。
水酸化カルシウムによる根管貼薬と仮封で細菌増殖・侵入を抑止
根管治療は、治療と治療の間にも細菌に対するケアを必要とします。まず、せっかく減らした細菌が治療の合間に増殖するのを防ぐために、水酸化カルシウムを根管内に入れる根管貼薬を行い、細菌の除去と繁殖を抑制します。また、内部に細菌が侵入しないよう仮封と呼ばれる処置で根管に蓋をします。
根管充填で空洞になった根管を隅々まで埋めます
根管の内部を薬剤によって洗浄・消毒した後は、空洞になった根管をお薬を使って充填していきます。
少しでも、空間があると細菌が繁殖するスペースとなるため、歯根の先端までしっかりとお薬を詰めることが重要です。
ガッタパーチャポイント
根管内部にある虫歯感染物質を綺麗に取り除いた後に、細菌が侵入しないように空洞を埋める詰め物(根管充填材)です。弾力性があり、緊密な封鎖が可能です。
MTAセメント
MTAセメントは、強アルカリ性で高い殺菌効果のある歯科用セメントです。充填材として使用する事によって根管内の無菌化を向上する事ができます。MTAセメントは硬化しながら、膨張するため、細菌の繁殖スペースをなくし、より緊密な根管充填が行えます。
被せ物を安定させるためのコア&ポストで支台築造
根管治療を行う歯は、度重なる切削によって歯の大部分を失っているため、このままかぶせ物を装着しても、長期の安定が見込めない場合があります。
そこで、行うのがコアやポストを使用した支台築造(土台の形成)です。
ファイバーポスト
歯の頭の部分がない歯にクラウンを被せる場合、根管内に芯棒を挿入します。これが「ポスト」と呼ばれるものです。そのポストの一つが「ファイバーポスト」です。この材料は口腔内で直接歯に装着できる、歯根に負担がかかりにくく歯根破折しにくい、見た目が良い、などのさまざまな利点があります。
CRコア
根管治療を行うことになる歯は、虫歯が進行している歯です。そのため、歯質の広範囲は失われています。その失われた歯質を補修し、根管治療後の再感染の防止・被せ物をする際の土台となるのがコアです。CRコアとは、コンポジットレジン(歯科用樹脂)で形成されたコアです。
適合性の高い精密な被せ物を装着
根管治療の仕上げは、土台の歯と隙間なく適合する精度の高い被せ物を装着します。
土台の処置がしっかり行われていても、被せ物の精度が低ければ、健康な状態を長期的に維持する事は不可能です。耐久性の高い素材の選定・精度を高めるいくつかの工程を行い、精密な被せ物を作製します。
歯肉圧排
土台となる歯と被せ物が隙間なくぴったりと合うように、歯と歯茎の間に糸を入れる歯肉圧排を行います。歯肉圧排を行う事によって被せ物と土台の境目が明確になり、精度の高い歯型の採取が可能となります。
精密な印象採得
型ズレが起きづらいシリコン素材での印象を行っています。さらに、印象後にマイクロスコープを使用した拡大視野の下で、印象材の歯型チェックを徹底しています。歯型は、被せ物を作製する際の設計図となるため、正確な印象が行えているかの確認はとても重要です。
徹底した咬合調整
被せ物の長期維持には、適切な咬み合わせが必須です。一箇所に負担がかからないようにミクロ単位での咬合調整を実施しています。
工程一つひとつの精度にこだわった根管治療をご希望の方へ
MOMO DENTAL CLINICでは、このように根管治療の一つひとつの処置精度にこだわって治療を進めています。根管治療は一つの工程でさえ精度を欠くと全てが水の泡となるため、しっかり時間をかけて、丁寧な治療を心がけています。岡山で細部の処置精度にこだわった精密根管治療をご希望の方は、ぜひお気軽にご相談下さい。